【小説】オリジナル/R刻短編/星


+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+
<<【小説】オリジナル/R刻短編/キミノイロ。
>>【小説】オリジナル/R刻短編集/TV
+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+

「空には電気がいっぱいだねー」
リノが夜空を見上げながら言った。
アルトからは、彼の左目しか見えないが、エメラルドの瞳が星を映している。
アルトは、リノと同じ配色のオッドアイで、彼を見つめた。
きらきら光る左目が、アルトの視線に気付き、リノはアルトのほうを向いた。濃紺の右目も、エメラルドの左目も、アルトだけを映している。
「アルト、電気見ないの? 綺麗だよ」
そうか、コイツには星が電気にしか見えないのか。
リノにペットボトルの紅茶を手渡しながら、アルトがベランダの柵にもたれかかる。
「あれは星だよ。電気じゃない」
アルトの、濃紫のさらさらとした髪が、彼の頬を掠めた。
「ホシ……」
リノがこくり、と紅茶を飲みながら呟く。
彼がペットボトルの蓋を閉め、ビリジアンブルーの髪を揺らしながら、手を遠くへ伸ばした。当然、星には届かない。届くはずもない。
「手、伸ばしても届かないね」
そういうところが可愛いんだけどな。
アルトが、リノの頭をよしよし、と撫でる。
「すっげー遠くにあるんだよ。テレポートできるお前でも行けないとこに」
「ボクはそんな遠くに行くつもりなんかないよ。いたいのはキミの傍だけ」
リノが、アルトの肩に頭を置いた。
あー……、チクショウ。可愛いな、オイ。
アルトがぎゅっと、リノを抱きしめた。
リノの甘い香りがアルトの鼻腔をくすぐり、彼は思わず頬を緩める。
「あれ?」
リノが首を傾げて、アルトから離れた。
手を上へあげて、なにかを確かめると、彼の顔がぱあっ、と輝く。
「アルト、ボクより背が大きくなった!」
「ん? アレ? ウッソ? ホントに?」
アルトが彼の隣に立ち、背を比べる。
175だった筈のアルトの背は、いつの間にか185ある筈のリノより、少し高くなっていた。
出会った(リノによれば、再会らしいけれど)頃は、リノを見上げるしかなかったのに。
いつの間にか、リノと同じ目線になっていたなんて。
これは、自分たちの生活にも言えることだろう。アルトが思う。
ちぐはぐな方向しか見てこれなかった、研究所でのあの数日間。
きっと、今の自分たちと同じように、少しずつ、同じ方向を見れるようになってきたんだ。
それに、リノだって。
随分、常識が身についてきた。研究所が世界の全てだったリノには、常識を身につけるのは大変だった筈だ。
それなのに、スポンジが水を吸うように、どんどん常識と知識を身につけるリノの成長は、目を見張るものがある。
そう思うと、ほんの僅かな期間なのに、お互いが、とても成長したことを実感する。
「お祝い、お祝い! メルちゃんに明日、ケーキ焼いてもーらおっと!」
両手を叩きながら無邪気な声で、えへー、と笑う恋人が愛しくって、もう一度彼を抱きしめるアルト。
その途端、アルトのお腹は、空腹を訴えるかのようにグゥゥ、と鳴った。
おっかしいなー、夕飯、ちゃんと食ったんだけどな。
そう思いながら、しかし、幸せな気持ちに、安らかな笑顔を浮かべつつ、アルトが言う。
「オレ、チョコレートケーキがいいかなぁ」
「ボクはねー、イチゴが入ってるのがいい」
リノもお腹が空いたらしく、グゥゥ、と腹の虫が鳴いた。
「聞こえてるよー。じゃ、明日はお祝いね」
メルの声が、室内から聞こえてきた。
「二人とも、食いしんぼだなぁ」なんて、サクラの明るい笑い声つきだ。
ちょっと恥ずかしくなって、アルトは真っ赤になりながら夜空を見上げた。
星はあいも変わらず、瞬きを繰り返している。
きっと、祝福してくれてるんだろうな。
らしくないけれど、アルトはぼんやりと、そんなことを思った。

END.


+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+
<<【小説】オリジナル/R刻短編/キミノイロ。
>>【小説】オリジナル/R刻短編集/TV