【小説】オリジナル/R刻短編/キミノイロ。


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「う、うぅ……」
真夜中。
アルトは、リノの悲痛なうめき声で目が覚めた。
「あ……ぁ」
隣に寝ているリノは、左の二の腕を抑えながら、丸まっている。
パチン。
アルトは部屋を明るくしたあと、すぐにリノの傍に戻って、彼の肩をゆすった。
「リノ。大丈夫か、おい」
「あ、ある、と」
玉のような汗を額に浮かべて、リノが起き上がる。しかし、彼の右手は、左腕をかばったままだ。
「どうした?」
アルトの問いに、彼はアルトの胸に顔をうずめて大きく息を吐いた。
「い、痛いの……っ」
「痛い? 刻印が?」
アルトはリノを引き離すと、急いで彼の左袖を捲り、彼の刻印を見た。R1という文字と、バーコード。いつもどおりだ。なんの変化もなく、綺麗な肌に、残酷に存在している。
「なんともないけど……こういうことって、よくあるのか?」
「う、ううん……っ。初めてだよ……。は、ぁ……痛い……」
涙が溢れる瞳と、右手が光る。どうやらリノは、キュアを試みているらしい。
「どうしよう、キュアも効かない……」
アルトは、どうしようも出来ない自分に腹が立った。と、同時に、今、その刻印に自分が触れたらどうなるんだろう、という、ほんの好奇心から来る疑問が生じた。
その可愛い顔をますます苦痛に歪ませるんだろうか。それとも、なんともならないんだろうか。
手で触ったら思いっきり痛いだろうが、もっと柔らかい部分だったら?
こくり、とアルトが喉を鳴らした。
どうしてだろう、どうしてそんなことを思ってしまったのだろう。自分はサディストなんだろうか。しかし、よりによってこんなときにその事実を知らなくてもいいじゃないか。
アルトが、自分の顔を刻印に近づけた。悲惨な事実の印なのに、こんなに綺麗だ。そして、苦痛に喘ぐリノの姿も。
そっと、印に唇を寄せて、Rの文字を舌で舐めた。
「あぅ……」
苦痛の声か、それとも、悦びか。
リノの顔を見るのが怖くて、アルトは下を向いた。
……最低だ、自分。
こんな状態のリノに、欲情した。
「……あれ?」
リノの声が、頭上から降る。
「……痛く、なくなった……?」
アルトは思わず、彼の顔を見た。
「アルトすごい! どんな魔法?」
ニコニコ笑うリノ。
知ってる、判ってる。それが心からのものであるということは。
だからこそ、アルトは良心の呵責を感じた。
「ごめん、リノ」
そんな彼に、とても申し訳なくて。
「オレ、お前が痛がってる姿を見たかっただけかも」
正直に、彼に謝罪した。
沈黙。
その沈黙が、アルトにはとても辛かった。
リノは、なにを考えているのだろう。
こんなヤツ、嫌われても当然かもしれないな……。
「……それが本当だとしても」
リノが口を開く。
「アルトがボクを好きなのは判ってる。だから、別に平気」
ふわぁっ、と笑うリノは、アルトには天使に見えた。
「アルト、エッチの時も、ボクが困ることをわざと言うし、そういうのにコーフンするんでしょ? じゃ、しょうがないよねー」
う、自分だけが知らなかったのか、その事実。
なんだかとても恥ずかしくなって、アルトは耳まで真っ赤になった。
「で、でもさっ! お前って、困ってるときまで可愛いっていうか! だいたい、Rの刻印も綺麗だし! どうしても触りたくなって……で、でも、手で触ったらきっと痛すぎるだろうから、じゃあ唇で、とか思って、いざキスしてみたら我慢できなくなって……」
長すぎる言い訳をしたら、酸欠になったのか、アルトはリノのほうに倒れこんだ。その彼の頭を、リノがきゅっ、と抱きとめる。
リノは、自分の腕にある刻印にアルトの髪が触れたのを見て、首を傾げ、また笑った。
「アルトの色だ……」
「ん?」
頭を抱きとめられたまま、アルトは返事をした。
「ボクの刻印、アルトの色なんだね」
アルトは頭を動かして、リノの腕を見た。今までは気付かなかったが、確かに、刻印は自分の髪の毛と似たような色だった。
「今まで、これ、大嫌いだったけど。でも、アルトの色だもんね。ちょっと、好きになっちゃったかも」
「おいおい。もしオレと別れたら、どうするんだよお前」
腕に少し力を込めて、リノがアルトの頭に自分の顎を載せた。
「アルトはボクに飽きたの?」
「飽きるわけねーだろ、バカ」
すると、リノがアルトの頭を離して、その額にキスをした。
相変わらず、キスが下手だ。
アルトはそんなことを思う。
「じゃ、そんな心配いらないからね。ボクは、好きなものは絶対変わらないみたいだし」
それって、つまり、一生ついてきますって言ってるのか?
再び、アルトの頬が染まる。
「あぁ……、あっそ……」
「あ、なんか言いかた冷たいー!」
わざとそっけなく言ってるのも、気付かれてるかもしれない。
仕方ない、話を逸らそう。
リノを抱き寄せて、無理矢理唇を奪う。
「キスはこうすんの。このヘタクソ」
「はぁい」
はい、と言っておきながら、リノはくすくす笑っている。
「……シよっか?」
「はいはい」
アルトは、リノをベッドに横たわらせながら、ふぅ、とため息をついた。
そして、一言。
「お前にゃ、負けるわ」

END.


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