【小説】オリジナル/こみらび/からーげ!


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 「今日は唐揚げだよー」
 キノモリさんが、揚げたての唐揚げを食卓に運びます。
「おいしそうなのだよ……」
「いいにおいでしゅねー」
「ますたー! はやく くうじぇ!」
 同居うさぎたちはみんな、よだれが止まりません。
「うん、食べよう食べよう!」
 いただきます、の大合唱の後、みんなでパクパクと、美味しい唐揚げを頬張ります。
 ガツガツガツ……。
 ありゅとの食べっぷりが半端なく、キノモリさんは少し心配になりました。
「ありゅと。もうちょっとゆっくり食べなさい。そんなんじゃ、のどに詰まらせちゃうよ」
「だって、うみゃうみゃ なんだじぇ」
「美味しいって言ってくれるのは嬉しいけど、もう少し落ち着こうよ」
 ほかの同居うさぎも、
「ありゅとは がっつきすぎ なのだよ……」
「もうちょっと おちつきなしゃい。からーげは にげましぇん」
 と、口々に言いました。
「むー……」
 唐揚げが大好きなありゅとは、なにか考えごと。
 その日の食事が終わっても、ずっと考えごとをしていました。

 **********

「ますたー!」
 お仕事から帰ってきたキノモリさんを、ビニール袋を持ったありゅとが出迎えます。
「ただいま、ありゅと」
 キノモリさんはにっこり笑って、出迎えてくれたのを歓迎します。
「ぴのとありゅふりぇさんは?」
「くたんち だじぇ。ぴこぴこどうがの なまほうそう するらしいじぇ」
 ありゅふりぇっどは、ピコピコ動画というサイトのプレミアム会員です。プレミアム会員だと、自分の番組を持つことができるらしいのですが、ありゅふりぇっどの番組は大変人気があり、また、ありゅふりぇっど自身も番組を配信することが大好きなのでした。
「きょうは ぴっしゅや くたも いっしょに なまほうそう するらしいじぇ」
「ああ、それじゃ、当分帰ってこないね。夕飯どうしようかなぁ……」
「それなら、ますたー!」
 ありゅとは、キノモリさんの目の前に、袋をずずいっと出しました。
「ますたー! からーげづくり、おりぇに おしえてくりぇ! もっと からーげ たべたいんだじぇ!」
「いいけど、それは……」
 ありゅとたち、こみろんらびっとには、人間のような指がありません。
 その代わりにぷにぷにの肉球があるし、ともすると結構鋭い爪がにゅっ、と出てきます。
 無理じゃ、ないかなぁ。
「やりたい?」
「やりたいじぇ!」
 うーん。
「ありゅとの手じゃ、難しいかもよ?」
「しょーちのうえ だじぇ!」
 ありゅとがやる気になってるのは、とってもいいことです。
 ここは。
「よし、伝授しましょう」
 一肌脱ぎましょうじゃありませんか。
「やったじぇ!」
 上着を脱ぎながら、台所に進むキノモリさんの後を、ありゅとがトコトコついていきます。
 キノモリさんは、手をせっけんで洗ってエプロンをつけ、ありゅとの両脇を抱えて、ありゅとにも手を洗わせました。
「まずは、鶏肉を用意します」
「とりにくしゃん!」
 キノモリさんの家には、たいていの食材は常備してあります。
 大食いうさぎ『こみろんらびっと(こみろん、とはスペイン語で大食漢のことです)』が三匹もいるキノモリさんちは、食材がないと大変なことになるからです。
 幸いなことにキノモリさんちの近所には、業務用スーパーやオストコなど、安く、大量に食材を買えるお店も多いため、そう困りませんが。
 そう言えば、おにくばたけさんも大量購入請け負ってたなぁ。
 キノモリさんが、少し前に閉店した、仲良しのお肉屋さんのことを少し思い出し、ふう、とため息をつきました。
「じぇ?」
 ありゅとが目をぱちくりさせながら、キノモリさんを覗き込みました。
 心配かけさせちゃった。
 キノモリさんは反省し、
「あ。ううん、なんでもない」
 と笑います。
「普通はここで、鶏肉を切るんだけど……」
「きるんだじぇ?」
「うちでは、小分けにするときに一口大に切ってるので省略します」
 ふむふむだじぇ。
 真剣な顔をして、ありゅとが聞いていますので、キノモリさんは続けます。
「次に必要なのは、これね」
 生姜のチューブ、にんにくのチューブ、お醤油、調理用のお酒、鶏ガラスープの素、片栗粉、薄力粉を調理台に置き、キノモリさんはありゅとに確かめさせました。
「ありゅとは字が読めないから、チューブは色で覚えてね。レモン色と、ピンク色だよ」
「りょーかい だじぇ!」
「お醤油とお酒も判るね?」
「わかるじぇ! くろくて しょっぱいのと、くらくらする においの だじぇ!」
 なかなか物分かりがいい子です。
「鶏ガラスープは、ニワトリさんの絵が描いてあるよ」
「おいしい おこな だじぇ! たまーに ぺろぺろ するじぇ!」
 減りが早い時があると思ったら、お前だったのか。
 キノモリさんはガクッと項垂れてから、説明を続けます。
「片栗粉はなめらかで白いお粉だよ。薄力粉はくしゃみが出そうなお粉ね」
「それは ふたつとも あんまり おいしくないじぇ」
 それも舐めたことあるのか……。
 一抹の不安を覚えながらも、キノモリさんはめげません。
「鶏肉をビニール袋に入れてから、これらをこれくらいの分量で混ぜて袋に投入、と」
 で。
 キノモリさんは、ありゅとに袋を持たせてみました。
 ありゅとは、自分の顔より大きい袋を、なんと片手で持っています。
「これくらいは、へでも ないじぇ!」
「おお、意外と力持ちだね、ありゅと」
 ありゅとの持っている袋を、キノモリさんがもみもみします。
「唐揚げ美味しく作りましょ! もみもみー! もみもみー!」
 ありゅとの瞳がぱあっと輝きました。
「おもしろそうだじぇ! それは なにしてるんだじぇ?」
「こーやってね、もみもみしながら、美味しくなるようにお願いするの」
 おりぇ、やってみるじぇ!
 ありゅとはそう言って、もみもみを始めました。
「からーげ おいしく つくるんだじぇ! もみだじぇー! もみだじぇー!」
 ぷすっ。
 ありゅとの爪によって袋に穴が開いて、タレがじんわり滲んできてしまいました。
「袋、交換しよう」
「ごめんじぇ……。きをつけるじぇ」
 キノモリさんが袋を交換します。
 ありゅとは神妙な顔をして、新しい袋を手に持ち、もみもみを続けます。
 もみもみもみもみ……。
「もみもみ上手だね、ありゅと」
「えへー!」
 あああ、可愛いなぁ。
 キノモリさんが親ばかを発揮し始めます。
 この子、唐揚げ作り巧いね! 巧いな! あああああ、可愛い。可愛い。ムービー撮りたい。
 しかし、今は伝授の真っ最中。
 キノモリさんは自分に気合を入れて、雑念を吹き飛ばしました。
「もういいかな」
 ありゅとに渡してもらって、中身を確かめると、キノモリさんは袋を冷蔵庫に入れます。
「じぇ?」
「三十分、漬け込みます」
「じぇ……」
 ありゅとがしょんぼりしました。
 心なしか、少し瞳が潤んでいます。
「もっと もみもみ したいじぇー……」
「え、でも、これで十分……」
 キノモリさんが言いかけますが、
「もみもみ……」
 ありゅとの涙目に負けました。
「……もう一袋、作ろう。ありゅと、一人で作ってごらん。見ててあげる」
「じぇ!」

 **********

「ただいま でしゅー」
「ただいま なのだよ」
「おじゃま するこ!」
「ハッハッハ! お邪魔しちゃうヨ! ……おや。なにやらいい匂いだネ!」
 ぴの、ありゅふりぇっどが、クタさんとぴっしゅを連れて帰ってくると、そこには。
「もうやめて! ありゅと、鶏肉もうないよー!」
「からーげじぇ! もっと もみだじぇー!」
「やめてー!」
 そこには、大量の唐揚げに埋もれている、キノモリさんと、ありゅとの姿がありました。
「ハッハッハ! 今日は唐揚げパーティーだ!」
「からーげぱーてーでしゅって! ぽく とっても うれしいでしゅよー!」
「これは、はちみつれもんを よういして もらわなければ、なのだよ……」
「つぎからは ぽくのために たこのからーげも よういして ほしいこ!」
 その日は、みんなでお腹いっぱい唐揚げを食べて、ありゅとたちは唐揚げの海で泳ぐ夢を見、キノモリさんは唐揚げの食べ過ぎで胃もたれを起こし、一日中眠れなかったそうです。

 余談ですが、唐揚げづくりを一日でマスターしたありゅとは、のちに、はなまる商店街の唐揚げ屋さん『たけし屋』さんでアルバイトすることになりました。
 ですがそれは、また別のお話。

 おしまい。

http://cookpad.com/recipe/3055471を参考に、執筆しました。


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