【小説】オリジナル/こみらび/最後のおにくばたけさん


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  今日はお休みの日。
 キノモリさんはお昼ご飯を作ろうとして冷凍庫を開けました。
 目的は、お肉。
 おにくばたけさんのお肉は新鮮で、冷凍してもそれほど質を落とすことなく食べれるので、買い溜めをしているのです。
 しかし。
「お肉……ないなぁ……」
 少しの冷凍食品と、大量のアイスしか残っていない冷凍庫を見て、キノモリさんは呟きます。
 どうしよう。親子丼がいいかな、と思ったのだけど。
 後ろに気配を感じて、キノモリさんは振り向きます。
「じぇ……」
 こみらび三匹が、お腹を押さえてこちらを見てきます。
「おなか すきまちた……」
「くうふくすぎて せつないのだよ……」
 あー、そうだよねー。
 キノモリさんがうんうん、と頷きます。
「じゃあ、野菜丼でも……」
 キノモリさんが提案しますと、
「えー!」
 三匹の抗議のコーラスが返ってきました。
「です、よねー……」
 キノモリさんはおとなしく、出かける準備をします。
「どこ いくんだじぇ?」
「おにくばたけさんだよ。お惣菜と、お肉買ってくる」
 すると、三匹の目がキラリ、と輝きました。
「おーにくばたけしゃーん! おにくばたけしゃーん!」
「ぽくたちも つれていってほしいのだよ」
 仕方ないなぁ。
 キノモリさんが苦笑いをして、三匹をそれぞれフードに入れ、出かけました。
 住宅街を抜け、お気に入りの喫茶店の横を通り、公園の横を通り……見えてきました。商店街の中ほどにあるのが、お肉屋さんの『おにくばたけ』さんです。
 今日は曇りです。豚肉が安い日ですので、豚肉をたくさん買うことにしましょう。
 『おにくばたけ』の自動ドアをくぐると、いつもと様子が違います。
 なんというか、がらんとしているのです。
 お肉もお惣菜も在庫が少なくて、什器も少なくなっています。
「ああ、アンタ。今日は何にするんだい?」
 おにくばたけのおばちゃんの顔も、なんだかお疲れ気味です。
「おばちゃん、どうしたんじぇー?」
「おかおが つかれてましゅよ?」
「ごじあいください なのだよ……」
 本当に心配です。何かあったのでしょうか。
 しかし、込み入った話のようですので、簡単には訊けません。
「あ、えっと……。鶏と牛をいつも通りと、豚を600g……」
「すまないけど、もう豚はそんなにないねぇ」
 曇りなので、ほかの人も買ったのでしょう。仕方がありません。
「じゃあ、豚はあるだけ。あと、コロッケとメンチカツを四つ、ポテトフライを400g……」
「ポテトフライもあるだけだねぇ、ごめんよ」
 ……やっぱり、何かがおかしいです。
「あっ! キノモリさんっ」
 おにくばたけさんの姪っ子、ぱるなちゃんが奥から出てきました。
「今日、最終日なの知ってたっけ? なんにせよ、来てくれて嬉しい!」
 最終日。
「何の最終日?」
 なんだか、嫌な予感がしまして、キノモリさんは店内を見回します。
 すると、張り紙が一枚。
『お客様へ
 おにくばたけは、土曜を持ちまして閉店いたします。
 六十年間の長きにわたり、ご愛顧ありがとうございました。    店主』
「閉店?! 今日で?!」
 キノモリさんは、思わず叫んでしまいました。
「じぇ? へーてん? おいしいんだじぇ?」
「ありゅとは ばかでしゅねー。おいしいでしゅよ、へーてん」
「ふたりとも ばかすぎるのだよ……。おいしいわけが ないのだ。おみせが なくなるのが、へーてんなのだよ」
「えー! なくなっちゃうんでしゅかー!」
「いやだじぇー! おばちゃーん! ぱるなー!」
 こみらびの声も、キノモリさんには届きません。
 ぱるなちゃんが申し訳なさそうに笑います。
「うん。……ごめんね。お知らせしとくべきだったね」
「えっえっ、なんで?」
 キノモリさんは、ぱるなちゃんに詰め寄りました。
 せっかく仲良くなったのに。
 コロコロとした形のポテトフライも、じゅわっと肉汁が染み出てくるメンチカツも、嫌いな野菜がいっぱい入っているのにこみらびたちが大好きなコロッケも、なんだか甘くてふわふわしてる独特の味をした鶏唐揚げも、もう食べることができないの?
「引っ越すことになったの。あ、でもねー……」
「おやめ、ぱるな。決まってもないことを、他人様に話すもんじゃないよ」
 おばちゃんがぱるなちゃんの言葉を遮ると、ぱるなちゃんは「ごめんなさい」と口をつぐみました。
「今日が最後なんですね……」
 キノモリさんはお財布を握りしめ、きゅっと口角を上げて笑顔を作りました。
「じゃあ、食べ収め、しなきゃ。忘れないように」
 忘れない。
 この店を、この人たちを、この味を。
 キノモリさんは自分に言い聞かせるように、頷きながら心で唱えました。

 その日、キノモリさんはお惣菜を全種類買い、クタさんとぴっしゅを呼んで、おにくばたけさんを偲ぶ会を執り行いました。
「アノ髪の長いリトルレディがいなくなるなんて、ボクは寂しいナー!」
「まあまあ、くた。びーるでも のむといいこ!」
 それは、とっても楽しかったけれど、とっても切なく、悲しい会でした。
 人生には、出会いと別れがあるものです。
 それが、今のキノモリさんにはとても重く感じました。

つづく。


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