【小説】オリジナル/こみらび/移動本屋のソラムラさん


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  今日はお休みです。
 キノモリさんは、クタさんとぴっしゅを誘って、はなまる商店街へと出かけました。
「ハッハッハ! キノモリさん、なにを見るんだイ?」
「これです」
 質問してきたクタさんに、キノモリさんは、チラシを渡しました。
 そこには、こう書いてありました。
 「『移動本屋 シエル』。世界中からチョイスした本を、あなたに」。
「フム? 移動本屋サン?」
「ぴのが本好きですからねー。面白そうな本があったら、買ってあげようかと思って」
「ほんとでしゅか! やったでしゅー!」
「たべれないから おもしろくないじぇ」
「でも、ほんをよむと かしこくなるのだよ」
「こ! くた・ばれー! たこやきのほんがあったら かってほしいこ!」
 一行は、てくてくと歩きます。
 普段キノモリさんが足を延ばすのは『おにくばたけ』がある方向だけなのですが、はなまる商店街は実は四つのエリアから構成されていて、その中心には大きな広場があります。
 催し物をするときには本部が置かれたりステージが置かれたりする、みんなの憩いの場。
 今回、移動本屋さんはそこに出店する、というのです。
「移動本屋さんなんて、面白いですよね。見るの初めてなんで、どんなのかなぁって思って」
「む。ぽくのゆうじんに いどうほんやを いとなんでいるひとがいるのだよ……」
 ありゅふりぇっどが、ほむほむと懐かし気に、エプロンのポケットで頷きます。
「へぇ、そうなんですか。初耳です」
「ぽくがいつもかぶっている、このぼうしを つくってくれたのだよ」
「ホホウ! その帽子、イカしてると思ったラ、そういうことだったのかイ!」
「あ、こりぇだじぇ?」
 広場につくと、虹のかかった青空をペイントしてあるトラックと、小さなイベント用テントが中心にありました。
 トラックは荷台のほうに本棚を設置してあり、自由に入ることができるようになっています。
 お店の人は、何やら作業中です。キノモリさんたちに気が付くと、どうぞ入ってくださーい、と一瞬振り向き、また作業に戻りました。
「へええ、面白いなー」
 キノモリさんとクタさんはトラックの内部に足を踏み入れました。
 クタさんが早速面白そうな本を見つけたのか、取り出して、ポーチの中にいるぴっしゅに見せます。
「お、ぴっしゅ! これイイんじゃないかイ? 『絵で見るクトゥルフ神話』!」
「こ……。たこのおはなしじゃないから いらないこ……」
「って、なんでぴっしゅちゃんがクトゥルフ神話なんて喜ぶと思ったんですか……」
 ハッハッハ、アメリカンジョーク! そう言いながら、クタさんは本を本棚に戻します。
 キノモリさんは、クタさんはアメリカ人じゃないような……と首を傾げつつ、ありゅと、ぴの、ありゅふりぇっどを降ろしました。
「好きに見て回っていいよ。欲しい本があったら言ってね、取ってあげる」
「うぇーい、わかったじぇ!」
「はーい! わかりまちた!」
「おお、りょうかいなのだよ」
 すると、ぴのがすぐにお目当てのものを見つけたようです。
「ますたー! あのほん、とってくだしゃい!」
「ん、どーれ?」
 ぴのの指す本は、どんぐり団子の作り方の絵本でした。
「すごくおもしろそうでしゅー」
「本当だ。買う?」
「かってくだしゃい」
 いいよ。
 キノモリさんは入口に戻り、かごを持ってきて、そのかごに絵本を入れました。
「ますたー! おりぇは あのほんがいいじぇー!」
 今度はありゅとです。
「どーれ?」
 ありゅとが指したのは、あがりこ大百科。どうやら自主出版本です。
「へー、面白いもの見つけたねー」
「このほんにかいてある あがりこ、いつかぜんぶせいは すりゅー!」
「ん、そうだね。全制覇目指してみよっか」
 キノモリさんがその本をかごに入れます。
「ますたーしゃん。ぽくは このほんがいいのだ……」
 最後はありゅふりぇっどです。
 ありゅふりぇっどの指した本は英語の本です。英語で『世界の秘境100』と書いてあります。
「たびしてるきぶんに なれるのだよ……」
「いいですねー。今度貸してください」
「もちろんなのだよ」
 買い物が済んだ三匹をそれぞれ上着とエプロンのポケットに入れまして、キノモリさんも見て回ります。
 いろんな言語、いろんな種類の本が、所狭しと並べられています。
 豪華な装丁のものもありますし、シンプルな装丁のものもあります。
 キノモリさんは、その中でもひときわシンプルな装丁の本が気になり、手に取りました。
 本にはシアン色の帯がついていて、その帯にはこう書いてあります。
 『白からの出発』。
 中をめくってみますと、全部白い紙です。
 もう一度表紙を見ますと、帯にこう書いてあります。
 『気のむくままに使ってください。やがてこの本は、まるで何年来かの親友のように、あなたにとってすごく大切なものになっているでしょう』。
「なるほど……」
 キノモリさんはその本を買うことにしました。
「ハッハッハ! ボクはこの本を買うことにしたヨ!」
 クタさんが持っているのは『日本お料理大事典』という本でした。
「ニホンのお料理、これで上手になれたらいいと思ってネ!」
「ぽくはこれだこ!」
 ぴっしゅが指した、クタさんのかごに入っている本は『大阪のたこ焼きベスト100決定版!』という本でした。
「あったんだ……」
 キノモリさんが苦笑いします。
 トラックの荷台からみんなが出ますと、先ほどのお店の人が、テントの下のお会計所に座っていました。
「いや、すみませんでした。おつりが見当たらなくて」
 お店の人が、キノモリさんからかごを受け取りながら言います。
 と、キノモリさんのエプロンのポケットにいるありゅふりぇっどを見つけて、あっ、と声をあげました。
「ありゅふりぇっど!」
 ありゅふりぇっどがポケットから身を乗り出します。
「そらむらしゃん!」
「え、知り……合い?」
「さっき ぽくがいってた、いどうほんやをやっている ゆうじんなのだ」
 ぴょん、とありゅふりぇっどがポケットから飛び出しまして、ソラムラさんの手に乗りました。
「いやあ久しぶり! なになに? 今はこの地方にいるの?」
「そうなのだよ。ぽくはこのひと……キノモリしゃんに おせわになることにしたのだ。ちなみにこっちは、ゆうじんのくたしゃん」
 ソラムラさんは、ありゅふりぇっどをカウンターに降ろしますと、立ち上がってぺこっとお辞儀をしました。
「初めまして。キノモリさん、クタさん! ありゅふりぇっどの友人のソラムラ ユウといいます。よろしくお願いします!」
 キノモリさんも姿勢を正してぺこり、とお辞儀をします。
「初めましてソラムラさん。キノモリ ケイといいます。どうぞ宜しく」
「ハッハッハ! クタ・バレーだよ! どうぞヨロシク!」
 クタさんは片手を上げてフランクな挨拶です。
「『世界中からチョイスした本を、あなたに』って書いてありましたけど、世界中を旅してるんですか?」
「そうです! 今回、いい本が溜まってきたので、手始めに越石に来ました。本は世界中から集めてますけど、本を売るのは日本と決めてるんです」
 ソラムラさんは座り直しますと、レジを打ち始めました。
「いやあ、こんなところでありゅふりぇっどに会えるとは思わなかった! 相変わらずハチミツレモン飲んでヒトに絡んでるの?」
「ひどいのだよ、そらむらしゃん。ぽくはそんなに からみはちみつれもんはしないのだよ」
「キノモリさんも、この子のハチミツレモンには用心したほうがいいですよー」
「あはは、気を付けます」
 会計が済んで、キノモリさんはお金を払い、品物を受け取りました。
 続いて、クタさんもお会計を終えます。
「ソラムラさんはここには長くいないのかイ?」
 クタさんが聞きますと、はい、とソラムラさんが答えます。
「次は隣の県へ行く予定なんです。ここに滞在するのは今日一日だけですね。明日の朝には高速に乗ってる予定です」
「あいかわらず、いそがしそうなのだよ」
「まぁ、好きでやってるから。それより、ありゅふりぇっどは――……」
 まだまだ、一人と一匹は会話が続きそうです。
「あ、すみません。キノモリさんやクタさんがいるのに」
 ソラムラさんが申し訳なさそうに謝罪します。
 しかし、長いこと会っていなかったのです。つもる話があるのは当然でしょう。
「ありゅふりぇさん、先に帰ってますね」
「つもる話もありそうだからネー」
「ますたーしゃん、くたしゃん、すまないのだよ……」
 キノモリさんとクタさんは、戦利品を手にその場を後にしました。

**********

 家に帰り、ありゅとやぴのと本を読んでいて、キノモリさんはもやもやと考え始めます。
 もしかしたら、ありゅふりぇさん、ソラムラさんと一緒に旅に出ちゃうのかな……。
 ありゅふりぇっどは元々、吟遊ウサギとしてこの街に来ました。いったんは去ったものの、旅先で見つけて連れてきたのは自分です。
 あの子は、旅をしていたほうがいいのかもしれない。ソラムラさんとだったら寂しくないだろうし、気の合うヒトと一緒にいられるんだったら、そのほうが。
 キノモリさんは、ありゅふりぇっどにと買った『世界の秘境100』を見ました。
 ――旅、したがってたもんな。
 コンコン。
 玄関のドアがノックされたような気がして、キノモリさんはドアを開けました。
「ただいまなのだよ」
「ありゅふりぇさん……」
 はて……。ありゅふりぇっどが首を傾げます。
「ますたーしゃん、そのかお どうしたのだ」
「だって……。ありゅふりぇさん、ソラムラさんと……」
 ありゅふりぇっどは妙な踊りをしながら玄関に入り、足の裏をよく拭いて振り返りました。妙なポーズがびしっと似合っています。
「ぽくは、ますたーしゃんに おせわになると きめたのだ」
 ほむ。
 ありゅふりぇっどは頷きながら続けます。
「ここには、ありゅともいるし、ぴのもいるのだ。うえのかいには、くたしゃんも、ぴっしゅもいるのだ。それになにより、ますたーしゃんがいるのだ」
 だから。
「ぽくは、ここにいるのだよ」
 涙を堪えきれなくなって、キノモリさんは慌ててくるっと後ろを向き、目をごしごしと擦ります。
 頷いて、振り返り、一言。
「おかえりなさい、ありゅふりぇさん」
 ありゅふりぇっどは片手を高く上げ、どや顔をしながら言いました。
「ただいまなのだよ、ますたーしゃん」

おしまい。


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