【小説】オリジナル/SS/暖かい爬虫類

暖かい爬虫類がいる。
そう聞いて、その男はペットショップにやってきた。
男が言うのを聞いて、店員は笑う。
「そんなのいるわけない。いるんだったら、俺が見せてもらいたいくらいですね」
男は決意した。なにがなんでも、30日以内に捕まえて、コイツをあっと言わせてやろうと。
男はインターネット中で情報を探し回った。
2ch、Yahoo知恵袋、mixi、フェイスブック、Google……。
あるとき、Googleで「暖かい 爬虫類」という条件で、検索していると、あるサイトが一件、引っかかった。
おかしい。
この前は引っかからなかったサイトだ。
男の第六感は、このサイトに対して反応を示した。
ここで、なにか聞けるに違いない。
そう思い、男は無我夢中でリンクを開いた。
そこには、こう書いてあった。
『暖かい爬虫類についてお探しの方はこちらにメールをください! ×××@gmail.com』
どうしても情報が知りたい。アイツをギャフンと言わせたいんだ!
男はその旨をメールする。
返信メールは二日後、来た。
「Rさま
用件はよく判りました。私もこの目で見るまでは、半信半疑だったんですから、店員の反応も無理はありません。
さて、本題ですが。暖かい爬虫類は、南米の○○というところにいます。
けれど、Rさま。あなたはきっと、決して、連れ帰れないと思います。いやいや、あなたを馬鹿にしているわけではありません。連れ帰れない理由が、あるのです。
私がその理由を言うのは簡単ですが、実際に見たほうが早いでしょう。それでは。」
男……Rは、そのメールにいぶかしげに首を傾げながら、飛行機を予約した。
なんとしても、見たい。
Rのその思いは、あの店員に馬鹿にされたから、ではなく、単純に好奇心を満たすためだけに、に昇華していた。
Rは語学に覚えがある。
南米に行ったのにも関わらず、Rのその語学力で、「暖かい爬虫類」探査はすいすいと進んだ。
正直、Rが困惑するぐらい、探査はうまく行った。
「Rさん、こちらです」
現地で雇ったガイドが、ある村のある少年の家を指して言った。
あそこに、暖かい爬虫類が。
Rは期待に胸を高鳴らせ、門扉をくぐった。
そこにいたのは。
そこにいたのは。
うろこと尻尾を持った、少年。
「……!」
「あなたも、僕を笑いに来たの……?」
少年の、穢れのない瞳がきらりと光った。
Rは、その場に立ち尽くすほかなかった。
俺は。
俺は……
なんというものを、探していた?
知らなければよかった真実。
知ってしまった真実。
Rはようやっと、口を開いた。
「『暖かい爬虫類』なぞ、知ってはいけなかったんだ……」
現地の言葉ではない。日本語だ。当然、少年には通じない。
「今、なんて言ったの? 僕には判らない」
「なんでもないよ。……君はいつからその姿なんだい?」
今度は現地語で語りかけるRに、少年は言葉を濁した。
「……ずっと、だよ。生まれたときからさ」
そうか。
Rはそう言うと、振り返り、少年の家を出て行こうと歩き始める。
しかし、出て行く間際、また振り返り、少年に手を振って、「またな」と言った。
Rは帰国するなり、あのサイトの持ち主に、サイトを閉鎖するよう頼んだ。サイトの持ち主は、快く了解した。

1年後。南米○○。
そこには、Rがいた。
ほんの好奇心で傷つけてしまった少年に、心から謝罪したい。
そして、友達になろう。
そう決めた彼は、国籍をこの国に移し、戻ってきたのだ。
「元気かな、あの子……」
手には、サッカーボールと、日本語と現地語の教科書。
あの村が近づいてくる。
あの少年の瞳を思い出す。
あの子は、許してくれるだろうか。
そして、友達になってくれるだろうか。
村は、もうすぐだ。

Tagged on: ,