【小説】岩男X/My fair_Angel!LV.03『ゼロって呼ぶ』


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 ユーリィからエックスを預かって数日後。
「あれ、お兄サン。いつもと違うカッコだ」
 エックスが指差しつきで笑う。
 普段着を着たゼロが、むっとしながらその手を退け、少年に顔を近づけた。
「改造を受けたんだ! イレギュラーの増加でな! いつもは力をセーブするために、この姿でいなきゃならないんだよ!」
「改造……」
「そっ!」
 ゼロは少年から離れて、彼をチラっと見た。
「……痛かった?」
 なにを言うんだろう。はっきり言ってゼロはイラついた。
 エックスだってレプリロイドだ。身体をいじることくらい普通にあるだろう。痛いわけない。それも判っているはずだ。
 そうだ。少しからかってやろう。
 そんな意地悪な衝動に駆られて、ゼロはあーあ、と大げさにため息を吐いた。
「痛かったなー。ブラックボックスの部分は避けてもらったけど、オレはブラックボックスだらけだからさー……」
「……ッ」
 エックスが手を前に組んで、びくん、と跳ねた。
 へえ、痛みを思い出すとか高度なことをして見せるなあコイツ。
 そう思ったのもつかの間。
「――――ッ……」
 エックスが目を見開いて、その両目からぽろぽろと液体をこぼし始めた。
 ゼロは思わず硬直して、起きた事象を必死にCPUで処理しだした。
 えっと、コイツはレプリロイド。そうだ、レプリロイドだ。あーっと、ユーリィは研究用の、とか言ってたなあ。そかそか、研究用の。だから泣けるのか。つか、泣けるレプリロイドに何の意味がある。いやいや、それはそうとして、どうしよう、泣いたやつの処理なんて初めてだぞ。どうする?
「あ……、あのな、おチビ――」
「いだがっだの……どこ……?」
 実際痛くなんかなかったが、ついたウソに後戻りが出来ないと悟ったらしく、ゼロは適当にここ、と指で示す。すると、エックスはそこを手でさすりだした。
「お、おい」
「お兄サンの、痛いの痛いの、飛んでけー!」
 なんだその呪文。
 ツッコミを入れたかったが、未だに正常に働かないゼロのCPUはそれを拒否した。
「もう痛くない……?」
「あ、ああ……。もう元気だ、ほら」
 ガッツポーズをするゼロに、エックスが一瞬きょとん、として、笑った。
「よかった、ゼロ!」
『ゼロ!』
 夢で見た少年の声と、エックスの声が被る。
 そういえば、あの夢はいつの間にか見なくなっていた。メモリーのどこかがイカレたのだろうが、ブラックボックスだらけのゼロは外装を改造するのが精一杯でメモリー格納部分は誰も触れることが出来ず、また、ゼロもたいした問題ではないと判断したため、そのままになっていた。
「……お前、名前は?」
「知ってるでしょ? エックス」
「だよな。知ってるし、覚えてられる」
 エックスがむぅ?と眉を寄せる。
 変な顔をしているな、とゼロは思ったが、それより彼は、自分の名前をこの少年に呼ばれたことが心地よかった。
「それよりも、初めてゼロって呼んだな」
「ん、そだっけ?」
「そう。いつもは『お兄サン』。あれ、イヤだったんだぞ」
 そか。
 エックスがふんふん、と頷いた。
「じゃあ、これからはゼロ、って呼ぶ!」
「ああ、そうしてくれ」
 彼らが廊下の奥に去っていくのを見て、遠くから見ていたらしいシータが、進級テスト不合格の通知を渡しに来たユーリィにポツリと呟いた。
「アンタの予想、当たったね」
「あら。私の予想ではないわ」
 くすくすと笑うユーリィが言う。
「ケイン博士よ。やっぱり、優秀な方」
 あーはいはい。ワーカホリックですこと。
 シータはそう言って、テストの通知を見て一言。
「こりゃひっでぇ。ね、なんとかならない?」
「なりません」

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To be continued…


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