【小説】岩男X/My fair_Angel!LV.01『出会い』


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「おーい! おーい、聞いてるー?」
 金髪の男性型レプリロイドの顔を覗きこんだ、金髪の女性量産型レプリロイドが言う。
「ん? あ、ああ。……悪い。聞いてなかった」
「だからね、後でアンタの部屋に、服、届けに行くから、部屋にいてよって言ったの」
「ん、んー……?」
 自分の手に握られたタブレット端末を見て、また聞いてない男性に、女性が髪の毛を思いっきり引っ張った。彼の頭がカクン、とそっちに曲がる。
「あのなぁ、シータ。オレは人間じゃないから、そうされても痛くもなんともないんだが」
「そうだろうけど、なんか憎らしかったからこうしたの。ぜんっぜん聞いてないんだもん」
「そりゃあ、まぁ……」
 彼がまた端末に目をやると、シータと呼ばれた彼女は端末を取り上げ、読み上げる。
「ペーパーテスト。ハンター候補生・1-Aラストナンバー・ゼロ。点数……」
「う、うわっ! ここで読むヤツがあるか!」
 ゼロ、というらしい彼はシータから端末を取り上げて、自分が提げていたカバンの中に納めた。
「アンタ、頭悪い訳ではないのに、なんでペーパーテストの点が悪いかね。これだからいつまで経ってもハンター候補生なんだよ」
「そーゆーお前は実技が悪いからいつまで経ってもライフセイバー研究生なんだろうが。候補生よりワンランク下じゃねーか!」
「なにをー?!」
 そこに、スキンヘッドでがたいのいい、男性型レプリロイドが通りかかった。
「お前ら、なにをやっとるんだ。喧嘩はやめんか」
「あ、シグマ隊長……」
「ゼロ、今回も残念だったな」
 シグマが言うと、ゼロが頭の後ろで腕を組み、へーへー、と言った。
「生まれた時からハンターだったシグマ隊長に、オレの気持ちなんか判りますかねぇ」
「お前は立派なハンターになれる。わたしが保障しよう。ただ……いかんせん思考が」
 ああ、それは知ってますけどね。
 ゼロが肩をがっくりと落とすと、シータがくくくくく、と忍び笑いする。
 こほん、と咳払い一つして、シータに態度を改めるように促すと、シグマがゼロに向き直った。
「あぁ、そうだ。ゼロ。ユーリィがお前に頼みごとがあるそうだ」
「は? ユーリィ……? ユーリィって?」
「うーん……。『地球は青かった』ヒト?」
「お前な。それはユーリ・ガガーリンだよ」
 お約束な、しかし息の合ったボケとツッコミを披露すると、ゼロは自分の顎に手を当て、首を捻った。
「スミマセン、シグマ隊長。オレ、ユーリィなる人物はちょっと……」
「ケイン博士の秘書だ」
「いや、あの……ホント、その人のこと、知らない、ん、ですが……」
「だが、頼みがあると」
 混乱するゼロの後ろから、女性型レプリロイドがひょっこりと現れた。
「噂をすれば、だな。ユーリィ」
 シグマに名を呼ばれると、ユーリィは頬を染めてにっこりと笑い、後ろにいた少年の手を引いてこちらにやってきた。
「シグマ隊長! あぁ、ゼロも。探したわ」
 ゼロは初めて見る彼女に戸惑いつつも、はぁ、と曖昧な返事をした。
 ……これがユーリィ。名前は男っぽいけど、見た目は随分女らしいヤツだな……。っていうか、ケイン博士の……秘書? あのじいさん、秘書いたのか……。
 散々、彼女をじろじろと観察したあと、ゼロが口を開く。
「えっと、ユーリィ、だっけ? 頼みって?」
 すると、彼女は少しむっとした調子で頬を膨らませ、少し強めに、
「あら。私たち初対面よ。まずは『はじめまして』と言うのが筋ではないの?」
 と、言い、後ろの少年に「ねー?」と同意を求めた。
「うんと……ゴメンナサイ、ボクには判らない」
 あ、そうね。ごめんなさい。
 ユーリィがにっこり笑いながら少年に謝罪した後、ゼロに向き直る。
「はじめまして、ゼロ。ケイン博士の秘書を務めている、ユーリィと申します」
 ユーリィが目を細めて、右手を差し出す。ゼロは少し戸惑いながら、その手を握り、会釈すると、小さく「ハジメマシテ」とぎこちない呟きを返した。
 それを見届けると、シグマが頷き、
「では、わたしは任務があるのでな。失礼する」
 と、ゆっくり去っていった。
 全員がその悠然とした行動を見送る。
「で、頼みって? なんだよ」
「ええ、この子のことで……」
 ユーリィが少年の背中を押して、ゼロの正面に立たせた。
 ゼロより頭一つ小さい少年は、キョトっとした表情で、ゼロを見つめている。
「じいさんの孫か? いやでも似てねーな……」
「ケイン博士にお孫さんはいらっしゃらないわ」
「え、でも、人間……」
 ゼロが言うと、少年が首を傾げる。
「どうして人間だなんて思うの?」
「耳があるからに決まってるだろ」
 人間型レプリロイドに、絶対つけてはいけないものがある。それは、本物と見紛うような耳だ。これは、法で決められており、破った者は厳しく罰せられ、該当個体は廃棄される。
 故に、シータの耳はいかにも機械の耳だし、ゼロに至っては、髪の毛で隠されてはいるものの、耳など作られていない。
「この子は、レプリロイドよ」
「え……? だって、耳……」
「研究用のレプリロイドなの。特別に許可されたわ」
 ゼロが、少年の顔を覗き込んだ。眼を見る。
 確かに、よくよく見れば、緑のアイカメラだ。
「いちねん」
 少年型レプリロイドが呟く。
「いちねんで、ボクに基礎的な人間社会を教え込むこと。おじいちゃんからの、伝言です」
「はぁっ?!」
 ゼロが思わず、いらついた声で返した。
「ケイン博士からの指令……いえ、命令です。ハンター候補生・ゼロ。あなたは、ハンターの素質があるにもかかわらず、あまりにも人間社会に適応できていない」
 ユーリィが静かに言う。
「この子……エックスと共に、人間社会を学び直しなさい。一年後、エックスがきちんと人間社会を理解出来ていたら、あなたをハンターに任命します」
「なっ……!」
 ゼロが絶句すると、エックスは彼に向かって確かめるように手を振った。
「ユーリィ。このヒト、CPU止まっちゃったの?」
「大丈夫よ、エックス。人間に近いレプリロイドにはこういうこともあるの」
「ふーん、大変だ」
 そんな二人のやり取りを見て、本当に大変だと思ったのか、シータがゼロの肩を揺らす。
「おーい。おーい、生きてる?」
 シータに言われて、ゼロの思考回路がやっと平常運転に戻った。
「ざっけんな! なんだ、このガキのお守りと、オレの昇進が交換条件……?」
「あなたしかいないわ、ゼロ」
「なにが『あなたしかいない』だ! そんなのは他を当たれ! 迷惑なんだよ」
 エックスの顔が見る見るうちにくもっていく。
「お兄サン」
 エックスが、激昂しているゼロの顔を覗き込んだ。
「ボクは、メイワク、ですか?」
 その声に、ゼロのCPUがなにかを思い出しそうになる。
「……お前、どこかで会ってないか?」
「……え。ううん。よく……判らない」
 なにか……。
 ゼロは、この声に身に覚えのある気がした。そして、それはとても大切なことである気がした。
(……コイツをそばに置いておけば、判るかもしれない……)
 そう感じたゼロは、手をひらひらさせて斜に構えると、ユーリィにいいか、と前置きをした。
「あくまで、昇進のためだ。その任務、受けようじゃないか」
 ユーリィがにっこりと笑う。
「ありがとう、ゼロ。そう言うと思っていたわ」
 彼女がエックスの肩をぽん、と叩くと、エックスも嬉しそうに、にこり、と笑う。
「彼の私物はあとであなたの部屋に届けます。それまで、連絡が取れる場所で、彼と一緒に待機していて」
 じゃあ、部屋にいるから。
 そう言うなり、ゼロは踵を返し、すたすたと歩き始めた。
「あ、待って待って」
 エックスが後ろをちょこちょことついて行く。
 それを見て、シータがため息一つ、ユーリィの隣に来て、彼女に訊いた。
「あれ、本当にやっていけると思ってるの、アンタ……?」
「ええ、間違いないわ。ゼロなら、必ずやり遂げてくれる」
 そうかなあ。
 シータは首を傾げながら、二人の後ろ姿を見守っていた。

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To be continued…


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