【小説】岩男EXE/inter_weBインターリュード『守護者(ロックマン)』


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 はっ、と気付いた。
 毛布をはいで、辺りを見回す。
 見慣れない部屋。
 ベッドに、イスにテーブル。そして、鏡。それぞれ、一個ずつ。
 みんな緑と白にまとめてあって、綺麗だ。
「……」
 綺麗だけれど。
 悪夢の続き……かも、しれない。
 炎山がため息をついた。
『おはよう』
 エグゼの声に、はっとする。
 PETを繋げたテレビに、エグゼがいる。
『随分うなされてたね。大丈夫?』
「……ッ?!」
 それ以上、声が出ない。
 目を白黒させて、目の前のテレビを見つめる。
 だって、ここにいるのは自分の持ちナビじゃないし、ここも自分の部屋じゃない。
『何でここにボクがいるのか……? ってこと?』
「……ここ、まさか……光の家か?!」
『あはは。ビックリしたのはそっちだったんだ? 違う、違う』
 彼がにっこりと笑った。
『ここは科学省。祐一朗博士の仮眠室だよ。博士とお茶飲んだのは覚えてる?』
 ……思い出してきた。
 悪夢は、現実だった。
「……さっきまでの夢よりも、ずっと、ずっと……現実の方が、イヤだな」
『そう?』
「何でキミがここにいるんだ」
 震える手を抑えて……。
 炎山が呟いた。
「彩斗くん……」
 エグゼがへらっと笑う。
『博士から連絡貰ってさ。熱斗くんに暇貰って来たんだけど……。駄目だった?』
「ま……真面目に答えろッ! どうして光一族はみんなこうなんだ!!」
 炎山の言葉に、彼はまたへらっと笑う。
『やだな。ボクは真面目だよ』
「キミは……光さんに似た受け答えをするんだな。本当に……」
 ため息。
『……キミが記憶を取り戻してるって聞いたんだ。だから、会いに来た』
「殺すためにか?」
『まさか! あ、そうそう。ママからも伝言を貰ってるよ「炎ちゃん、大丈夫?」って』
「はる香さんだって、オレを憎んでるだろう? 何故そうウソをつくんだ?」
 エグゼがちょっぴり悲しそうに言う。
『……で、なんで思い出したの?』
「突然だ。理由なんてない」
 だろうね。エグゼが呟いた。
『ホントに、突然みたいだね。全然記憶戻ってない。中途半端だもん』
 彼が言うか言わないか、ドアが開いた。
『祐一朗博士、炎山くんが目を覚ましました』
 彼が入ってきた人物に報告する。
「うん、ご苦労様。ロックマンエグゼ」
 祐一朗がにっこり笑って、エグゼを労った。
 エグゼが頬を染めて、嬉しそうに笑う。
『ありがとうございます』
「ふふっ。どういたしまして」
 祐一朗が椅子に腰掛けた。
 そして、炎山を見る。
 炎山は、彼の瞳から顔を背けた。
「……嫌われたかな?」祐一朗がおどけてみせる。
「……あなただって、オレを憎んでるくせに……!」
 炎山は、無表情で答えた。
「何度も言うけど……」
 祐一朗が言いかける。
『キミの事、感謝してる』
 エグゼが、それを引き継いだ。
「嘘だ!!」
 炎山がエグゼを睨みつけた。
「キミを殺したんだ! 突き飛ばして、殺したのにッ!!」
『うん、突き飛ばされはしたよ』
 エグゼが言い返す。
『……じゃあ、何で突き飛ばしたの?』
「理由なんて……」炎山が言葉を濁した。
 思い出せなかった。何故、彼を突き飛ばしたのか。
 しかし、思い出せなくても明確だ。
 ……彩斗くんを、突き飛ばして……殺した。
「理由なんて、要らないじゃないか……」
「理由……ね」祐一朗が呟く。「キミの身体には、その理由が刻み込まれてるけど?」
 訳が判らない、といったように、炎山が祐一朗を見た。
 しかし、すぐに俯く。
 祐一朗が今日、何度目かのため息をついた。
「服を脱いでごらん。教えてあげる」
「馬鹿げてる」炎山が呟いた。「オレの身体には、何もない」
『いや、ある』
 エグゼが身を乗り出した。
『とうさんの言う通りにして、炎山くん。これ以上、その罪の意識に捕らわれたくないなら』
 炎山がゆっくりと頷いて、上着を脱いだ。
「……」
 そして、Tシャツも脱ぎ、自分の肩を抱く。
「……何も、ないでしょう?」
 祐一朗が置いてある鏡をちらっと見た。
「その鏡で、自分の背中を見てごらん」
「何があるって言うんだ! 何もないって言ってるでしょう!」
 エグゼが炎山をなだめる。
『ボクたちが説明するよりは、見た方がいいよ』
 炎山が脱いだ服を不安そうに抱きしめながら、鏡の前に立った。
 そして、ためらいつつ、背中を映す。
「?!」
 彼の背中には、ひどい傷跡があった。
 噛まれたような傷が盛り上がっている。
「な……?!」
 その時、彼は思い出した。
 そう、あの時の傷なんだ……。
『キミは、ボクを助けてくれたんだ……』
 エグゼが夢を見ているかのように、呟く。
『キミが、今のボクを作ってくれた。キミがいたから、ボクは熱斗を守っていこうと誓ったんだ』
「……」
 炎山がその場に座り込む。
 そして、『護る者』になった『彩斗』を見て、涙で曇った顔を、綺麗な笑顔に変えた。
「『ロックマン』。平和を守る、架空のヒーローか……」
『そう。ロックマン。ボクは、ロックマンの名を継ぐもの。「護る者」。……でもね』
 エグゼも笑い返した。
 かつて、自分を守ってくれた1人の『護る者』に対して。
『キミも「ロックマン」だったんだよ』


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