【小説】岩男EXE/inter_weBインターリュード『向日葵』


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 ……今日も暑い……。
 熱斗が青い絨毯の上にぺたっと寝転んだ。
 絨毯の起毛が、肌にまとわりついてうざったい。
 でも、クーラーつけると寒いし、かと言ってそのままじゃ暑いし……
 何より、動くのがだるい。面倒くさい……。
「熱斗、遊ぼう!」
 隣の家から窓越しに、メイルが話しかけた。
「やだ。暑い。お前んちもクーラー入ってないじゃん」
「当たり前よ! 身体に悪いでしょ? 電気代だってかかるし……。ウチはあたし一人なんだもん」
「……と、言う訳で、却下。じゃな」
 熱斗はしかめっ面をして、カーテンを閉めた。
 カーテンの向こうで、「バカ熱斗!」と言うメイルの声が聞こえる。
『熱斗くんってば! 折角誘ってもらったのに……もぉ、子供は元気に外行って遊ぶ!!』
 お節介焼きのエグゼが熱斗に向かって小言を言い出した。
「うぅ……。この暑いのに、もぉ勘弁してくれよぉ……」
『だって熱斗くん、もうすぐヒマワリ咲くでしょ? ボク、ヒマワリ見たい!! みんなも誘って行こうよ!』
「お前、去年も、一昨年も、その前も同じ事言った」
 ウンザリするように熱斗がため息をつく。
 そんな熱斗に、エグゼがおねだりを試みる。
『見たいよ! ヒマワリ見たい!! ねぇ、外行こうよ、熱斗く~ん!!』
 確かに綺麗だけど、毎年大騒ぎする事ないだろう?
 熱斗が暑さに辟易しながら考えていると、エグゼが心を読んだかのように言った。
『だって、電脳世界にはヒマワリ咲かないもん。大事件だよ、これは』
 ……大げさだよ。
 熱斗が肩をすくめた。
「オレにとっては、きょうのオヤツの方が大事件だよ……。この暑いのに、ホットケーキだったらどうしようかと……」
『文句言わない! ホットケーキ、おいしいでしょ? ボクは好きだな。焼きたてのアップルパイでもいいな~』
 エグゼが頬に手を当てて「えへへっ」と笑った。
 熱斗が「うあ~」と、唸る。
 甘いものなら何でもいいのかな、こいつ……。
「……暑い時に熱いモノなんか食いたくない……。かき氷がいいな、イチゴ味のやつ」
『そんな事より、ヒマワリ~!!』
 文字通り、『花より団子』の熱斗には、花の良さはあまり判らない。
 ヒマワリなんか、花よりむしろその種の方が重要なのだ。
 熱斗が寝返りをうちながら呟いた。
「しかし、好きだよな、ヒマワリ……。種はおいしいけどさ」
『種の味は知らないけど……ヒマワリの花、大好きだよ。大きいし、優しいし……。ボクが一番好きだった人に似てるんだ』
「?」
 熱斗が首を傾げた。
「誰それ? ロール? あ、それは現在進行形か……。……メイル? ……うーん、オレにとってはメイルって『はえとり草』だけどな」
 はえとり草、とはまたひどい言い方だ。
 エグゼがディスプレイから身を乗り出す。
『何でよ? そんな、可哀想じゃないか! メイルちゃんは可愛いだろ? そりゃあ、ロールちゃんには敵わないけど~』
 おいおい、幸せそうだなぁ……。
 そう呟いてから、熱斗が「ちっちっち」と舌打ちした。
「はえとり草って、花は結構可愛いらしいぜ。アイツ、みんなが言うには可愛いんだってさ。オレはよく判んねーけど……。でさ、はえとり草って、草のクセに物とって食うじゃん。あいつ、そんな感じするもん。だから、はえとり草」
 はえとり草。
 ……『彩斗』だったら、その言葉に賛同するかもしれないな。
 エグゼが苦笑した。
 ……メイルちゃんは、彩斗の天敵だったからな……。勝手に天敵って決めつけただけだけど。
『でもなぁ、はえとり草……』
「ラフレシアとか言わないだけ、マシだろ?」
 いくら何でも、ラフレシアはひどすぎる。
『……メイルちゃんに言っちゃおうかなァ? おーいっ、メイルちゃーんっ』
 エグゼがちょっと意地悪く言ってみる。
「あ、マジ、やめ!」熱斗が慌てて発言を取り消す。「ウソ、冗談!」
 その慌て振りに、エグゼがくすっと笑う。
 熱斗も結構、可愛いんだよね。こーゆーとこは。
「……で、誰? ヒマワリに例えられる、お前の好きだった人って」
 熱斗が体を起こして訊く。
『興味ある?』エグゼが訊き返す。
「とっても」熱斗が答えた。「兄さんの事、あんまり知らないし」
 エグゼがかつて双子の弟だったオペレータを眺める。
 彼は、彩斗の事を「兄さん」と呼ぶ。
 もう2度と、昔呼んでくれたように呼ぶ事はないだろう。
 大好きな熱斗。
 大切な熱斗。
 でも、そう。きっと、覚えてない。
 思い出さなくて、いい。
『……秘密』
 そして、くるっと後ろを向く。
『教えてあーげないっと!』
「何だよそれェ!」
 熱斗が頬を膨らませた。
「そこまで言ったなら、話せってば!」
 後ろでわめいている熱斗の声に少しだけ笑って、エグゼが悲しそうな目をした。
 そう。覚えてなくていい。
 触れられなくていい。
 側にいれるだけで構わない。
 一番好きだった人。ううん、今も一番大好きな人。
 彼の側にいられて、彼と共に成長できる事が、ボクの望みだから。
 たった1つだけ……これだけは譲れない、ボクの望みだから。


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