【小説】ワートリ/三輪姉/思い出のカレー

「秀次くんは本当にカレー好きね」
「いいだろ、姉さんのカレーは世界一なんだから」
じゃあ、いっぱいよそってあげるね。
耳元で囁かれた瞬間、眼が覚めてしまった。
目覚めたくなかった。
姉さんのいない今になんか、興味はない。
「……近界民は」
必ず殺す。
それが、今のおれに課せられた、使命。

********

「だからさー、秀次はその食事やめろって!」
十秒チャージを済ませるおれに、陽介が顔をしかめた。
「これが一番手早く済む。食事なんぞに気を使っている暇はない」
違う。
本当は。
もう、食べれないものしか、食べたくないから。
心の傷がそうさせているんだろうと、医者には言われた。
何度食べようとしても、口がモノを受け付けない。吐き戻してしまう。
そしておれは、今日も……

********

「秀次くんは本当にカレー好きね」
「いいだろ、姉さんのカレーは世界一なんだから」
同じ夢を
叶わぬ夢を
見続ける……。