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お外の雲行きが怪しいです。
ありゅとは窓の外を見て、呟きました。
「かぜがないてりゅ」
「なにそれ」
読書をしてたさんが本から顔を上げて問います。
「『ちゅうにびょう』だじぇ」
どこで覚えたんだろう……。さんが苦笑しました。
「ありゅと、それかっこいい、かっこいい」
ぴのが褒めると、ありゅとがえへん、と胸を張ります。
いや、それ、痛々しいだけだよ。さんは言いたいのをこらえて、言葉をコーヒーで丸呑みしました。
「かーぜーがーないてーりゅ!」
ありゅとはよっぽど気に入ったようで、変なメロディーに乗せて歌っています。ついでにテーブルの上で変な踊りも。
「台風が近いからね」
今日はさんも仕事がお休みです。
さんがTVをつけます。
『依然強い勢力を保った台風17号は、関西から本州に沿って北上を続けています』
女性アナウンサーが天気図の前で淡々と、台風の進路についての続報を伝えていました。
「たいふう……。あっ、ますたー。ころっけ、やすいはじゅ」
ぴのが思い出したように言うと、ありゅとがころっけ?!とテーブルから身を乗り出しました。
はなまる商店街のお肉屋『おにくばたけ』さんでは、台風の日はコロッケが、雪の日にはポテトサラダが、雨の日には牛肉が、曇りの日には豚肉が、晴れの日には鶏肉が、それぞれ安くなるのです。
「ますたー! ころっけ! おりぇ、ころっけたべたいじぇ!」
「まだ台風来てないから、やってるかな?」
さんが首を傾げると、ありゅとはさんの頭に乗って、髪の毛をくいくいっとしました。
「たいふうくりゅまで、おみせのなかでまってりゅ」
食べ物のことになると、ありゅとはききません。
仕方ないなぁ、とさんはフード付きのパーカーを羽織ります。
「はい、ぴの、ありゅと。乗って」
ありゅとはそのままフードの中に滑り込みます。ぴのはさんの手のひらに乗って、フードにぽふっと投げ入れられました。
TVを消し、玄関を出て、鍵を閉めて、一路、はなまる商店街へ。
さんはてくてくてくてく、歩いていきます。住宅街を抜け、お気に入りの喫茶店の横を通り、公園の横を通り……見えてきました。
商店街は、お店は開いているものの、ひとっこ一人いません。普段ならば活気がある商店街なのですが、やはりみんな、台風を警戒しているのでしょう。
さんは二匹を連れて、お肉屋さんの自動ドアをくぐりました。
「あら、いらっしゃい」
いつもどおり、笑顔が温かいおばちゃんが出迎えてくれます。
「ころっけー!」
「ころっけー!」
フードの中の二匹は、もう我慢の限界のようです。ありゅとなんて、フードから身を乗り出して、目をキラキラさせています。
「あらあら。ぴのちゃん、ありゅとちゃん。ちょいとちょいと、コロッケ買いにきたのかい?」
「二人とも、特売やってるってきかなくって」
さんが笑いながら言うと、おばちゃんはにこにこ笑いながら、ちょっと待ってね、と奥に入って行きました。奥からさくっ、さくっ、と軽快な音が聞こえたかと思うと、おばちゃんが一口大に切ったコロッケを山盛り持ってきたではありませんか。
「ぴのちゃん、ありゅとちゃん。お待たせ。ちょうど揚げたてなんだよ」
「うわーい! おばちゃんだいしゅき!」
「うりゅー! たべりゅ、たべりゅー!」
二匹はフードの中からぴょん、と降りて、コロッケが置かれたテーブルによじ登り、ぱくぱくと食べはじめました。
「うめー!」
「おいしー」
『おにくばたけ』さんのコロッケは、近所でも評判の絶品コロッケなのです。
「ああ、おばさん。いつもスミマセンね」
「で……。まだ、二~三個いるだろう?」
「そうですね。みんなで家で食べる分がいりますね。三個で足りるかな」
「そうかい。じゃあ、あの子たちが食べるのに満足したら包んでおくよ」
二回目のスミマセン、を言って、さんは二匹に目をやりました。本当においしそうに食べる子たちです。
おばちゃんも二匹を愛しそうに見つめています。
「まったく、ぴのちゃんとありゅとちゃんは可愛いねぇ」
「ホント、天使みたいな子たちなんですよ」
「あんたが羨ましいったら。うちんちにもこないかねぇ」
「来たら来たで、結構、食費かかりますよ」
「あら。そんなのへのかっぱだよ。この可愛さだったら」
結局、二匹はこの地域にも雨が降り始めるまで、コロッケまみれになっていたのでした。
おしまい。
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- 【小説】オリジナル/こみらび/もうねりゅ。
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